～奥ちゃんと夫氏～『あなたの知らないこと』

あなたの知らないこと

　夫は私のことを否定しません。お互い考え方の違いはあるので、意見はしますが、否定はされたことがありません。

　夫のスタンスを見ていると、時々過去のいろいろな出来事と比較する自分がいます。

　テイラー・スイフトの赤いリップ姿が好きな私。

　赤いリップをつけると、当時の交際相手は「唇が赤い（僕は好きじゃないの意味）」と指摘してきました。「そうだよ、赤いリップが好きなの」と応えても、何度も「唇が赤い」と言われ……途中、面倒くさくなって拭いました。

　夫も赤いリップの私を見て、「今日の奥さんは唇が赤いね」と言いましたが、「うん、赤いリップが好きなの」と応えると、その後は何も言いませんでした。
　何度も言われたら、「だから何やねん！？」（私は関西人です）となりますが、夫の発言は一度だけだったので、「唇が赤い」という事実を述べただけになりました。

　「痩せたい」と言うと、これまた当時の交際相手は、「え！？貴女はそのままで完璧。そのままが至高」と言いました。私はこれを言葉通りに受け取り、「ありのままの貴女が最高で、そのままを愛している」と勘違いしました。
　今思うと、彼は私を自分のよいように（彼好みの見た目の私のまま）コントロールしたかっただけだな、と思います。

　「貴女は99％完璧」「残り1％は何？」「入浴せずに寝る日があること」と言われ、「どんなに疲労しても、入浴する綺麗好きな女性でいてほしいんだな…」と、思って、頑張ったこともありました。

　今の私だったら、

「で？それが？あなたに何の迷惑をかけるので？同居しているわけでもないのに？仕事前には綺麗にして行ってるのに？大好きなお風呂に入るエネルギーも枯渇する程疲れている恋人に対して、労いもせず、入浴を求める。無理～！本当そういうの無理～！（IKKOさん風）」

くらい言って、即行サヨウナラする気がします。むしろ当時何故そうできなかったのか……。「あの人には思い遣りの心がないぞ！」「今のうちに！」「別れとき！！」って、アドバイスしたい 😂

　夫は、私が「痩せたい」と言うと、「頑張って」と言い、私の意思を支持し、見守ってくれます。そして、「病的に太ったり、痩せたりするなら、その前に止めます。それ以外は奥さんの好きなように」と言います。

　髪の長さも、「そろそろ切ろうかな」と言うと、「ショートも似合ってましたよ」、「頑張って伸ばすね」と言うと、「2回目のヘアドネーションが目標ですもんね」と応えます。
　そこに「僕は君にこうあってほしい」が無いのです。あるのかもしれませんが、夫はそれを口にしません。

　私は、人がどうであろうと、見た目も、中身も、その人の自由だと思っています。

　でも、恋人や配偶者、親や教師……そういう人達が要求する像は、絶大な影響を与えると思うのです。だから、自由でいいと分かっていても、その要求される像に囚われる。
　きっと皆悪気はなく、無自覚なのだと思います。私も無自覚に、要求し、誰かを苦しめたことがあったんだろうな。その無自覚さ、罪深いな…と思っています。

　そんな私は今、要求をしてこない夫と過ごすのが、とても楽で、居心地が良いです。

　夫の理想を押し付けられるでもなく、私の考え方を否定されるでもなく、頑張る姿を支持してもらえ、だらけた時でもたまには良いよねと笑ってくれる。
　そのスタンスにより、私は、「誰かの理想の私」ではなく、私の持つ「理想の自分像」に向かって、気持ちよく努力できています。

　人は、被害に関しては敏感なのに、加害に関しては鈍感なところが多分にあると思います。私が今後、理想像を求めて他害するとしたら、きっとそれは、夫と自分の子ども。
　彼らが私の傍で、楽に、居心地よく過ごせるように、自分の無自覚な暴力性について、いつも冷静に、客観的に見る努力が必要だと感じています。簡単では、ありませんが。

　過去、いろいろ悩んだ時によく参考にしていたのが、DJあおいさん。

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